婦人科

卵巣未熟奇形腫(immature ovarian teratoma)のCT/MRI/画像診断

卵巣未熟奇形腫の一般的な知識

まれな卵巣胚細胞腫瘍の1つ。

未熟な組織をもつことから成熟嚢胞性奇形腫とは異なり、悪性の性格を持つ腫瘍。

成熟奇形腫にみられる成熟組織要素に加えて、未熟または胎児性の組織の存在によって特徴づけられる。存在する未熟神経上皮の割合は、腫瘍のグレード(したがって予後)と相関することがしられている。

肉眼的には未熟奇形腫は大きく、被包化された充実部を有する腫瘤として認める。れに加えて、毛髪、軟骨、骨、石灰化など、成熟奇形腫に見られる多くの成分が見られることがある。

20歳未満の女性に多くみられる。(通常は30代までと言われている)

腫瘍マーカーとなるAFPの上昇は、50%程度の患者にみられるとされている。

未熟奇形腫の一般的な画像診断の特徴

初診時に大きな腫瘤を形成していることが多い。

内部不均一な腫瘤で、充実部が大きい腫瘤もあれば嚢胞成分が大きい腫瘤もある。

内部に脂肪と石灰化の撒布像を認める。

転移は腹膜、肝臓、肺に認めることが多い。脳転移も報告されている。

鑑別疾患

成熟嚢胞性奇形腫と所見がオーバーラップすることがあり、しばしば画像での診断は困難となる。

症例画像

症例1

immature ovarian teratoma
case1

左付属器を首座とする、骨盤腹部の嚢胞性病変で、液体と内容物があり、内部に石灰化と脂肪の撒布像があり、未熟奇形腫を示唆する。

症例2

immature ovarian teratoma
case2

肝臓内に液体、脂肪、石灰化要素を伴う複数の不均一な病変があり、病変が右葉の大部分を占めている。未熟奇形腫の肝転移の症例。

症例3

immature ovarian teratoma
case3

別のスライス

immature ovarian teratoma
case3

骨盤腹部付属器のかなり大きな多房性嚢胞性病変。不均一で、主に嚢胞性、厚さの異なる複数の増強隔壁、病変内の充実部を疑う軟部影、散在する脂肪成分、石灰化成分を認める。

症例4

immature ovarian teratoma
case4

左卵巣から生じた大きく不均一な腫瘤で、子宮の前方に位置。腫瘤には軟部組織、脂肪、石灰化が含まれる。腫瘤の縁の周囲の血管は左側に向かい、左卵巣静脈に流れ込んでいる。左卵巣由来であることが示唆される。

症例5

immature ovarian teratoma
case5

巨大な腹部骨盤腫瘤。脂肪と石灰化の巣と線が点在する充実部および嚢胞性要素から構成されている。

症例6

immature ovarian teratoma
case6

嚢胞性病変の内部に充実部を示唆する軟部影があり、石灰化と脂肪の撒布像を認める。

引用文献・参考

【症例1-6】Radiopedia 「Immature ovarian teratoma」https://radiopaedia.org/articles/immature-ovarian-teratoma