尿管坐骨孔ヘルニアの一般的な知識
尿管通過障害の原因の1つ。
高齢者、特に女性に好発。
梨状筋の萎縮が原因と考えられており、妊娠・便秘・外傷などによる腹圧の上昇を契機に発生する。
大坐骨孔からでるか、小坐骨孔からでるか?大坐骨孔から出る場合は梨状筋の上からでるか下からでるかで3つのタイプに分けられる。
経過観察のほか、尿管ステント留置や手術で治療されることが多い。

尿管坐骨孔ヘルニアのCT
尿管は全体の連続性を確認できないことを時折経験する。その場合、尿管通過障害の原因が把握できない場合がある。高齢者の尿管通過障害で原因が特定できないときに、鑑別の1つとして考慮したい疾患の1つ。
渦巻き状にヘルニア内を尿管が走行する「curlicue sign」が特徴的。
身体所見による診断は難しく、特徴的なCTの所見を知っておくことで診断の一助となる。
鑑別疾患
特徴的な画像所見を捉えることができれば、鑑別疾患は特になし。
なお、尿管ヘルニアは鼠径部に最も多く、尿管坐骨孔ヘルニアはまれ。
症例画像
症例1

左尿管坐骨孔ヘルニアを認める。

左水腎症を呈している。(矢印)ヘルニアをきたした尿管。
症例2

造影CT排泄相(冠状断):いわゆる渦巻き状のcurlicue signを認める。

上の症例のVR画像 右坐骨孔ヘルニアによるcurlicue signを認める。
症例3 86歳女性

左尿管坐骨孔ヘルニアを認める。

ちなみに元文献の症例報告では、経膣で後腹膜にテンションをかけながら経皮的に殿部からプローブを押してヘルニアを整復するという面白い手技をしている。
症例4 86歳女性

赤矢印:尿管坐骨孔ヘルニアをきたした尿管
黄矢印:正常尿管

この症例のシェーマ:大坐骨孔(Greater sciatic foramen)、小坐骨孔(Lesser sciatic foramen)
なお、解剖学的な分類として坐骨孔ヘルニアは3種類ある。
- 大坐骨孔ヘルニア(梨状筋より上)
- 大坐骨孔ヘルニア(梨状筋より下)
- 小坐骨孔ヘルニア
元文献は、尿管坐骨孔ヘルニアによって敗血症をきたした症例。
症例5

![尿管坐骨孔ヘルニア(Ureterosciatic hernia)
case5]](https://www.radioloimaging.com/wp-content/uploads/2025/02/image-61.png)
A,B:左坐骨孔ヘルニア

C:順行性尿路造影 curlicue signを認める。
引用文献・参考
【症例1】Sylvestre D et al. 「Ureterosciatic hernia」 Appl Radiol. 2019;(1):42-44.
【症例2】Radiopedia https://radiopaedia.org/articles/ureterosciatic-hernia
【症例3】Jiro Kimura et al.「Successful manual reduction for ureterosciatic hernia: A case report」International Journal of Surgery Case Reports
Volume 57, 2019, Pages 145-151【症例4】Kohei Kakimoto et al.「Urosepsis secondary to ureterosciatic hernia corrected with ureteral stent placement: a case report and literature review」International Journal of Emergency Medicine volume 14, Article number: 67 (2021)
【症例5】Yeong Uk Kim et al.「Ureterosciatic hernia causing obstructive uropathy successfully managed with minimally invasive procedures」Yeungnam University Journal of Medicine 2020;37(4):337-340